朝、雨がやんでいたのでオリンパスPEN FTを持って撮影に出る。
淀川の河川敷に出て、
対岸を眺めたり、写真を撮ったり。
前夜の雨に濡れた草木が美しい。
対岸から雨の壁が迫ってくるのが見え、
急いで退散。

今読んでいる本の中に出てきた吉本隆明の幸福論。
老いの鬱ぎ(ふさぎ)をしのぐ方法として、
「幸・不幸とかも、長く大きくとらえないで、短く小さなことでも、
一日の中でも移り変わりがあるんだよと小刻みにとらえて、
大きな幸せとか不幸とかいうふうには考えない」。
撮影をしながら歩いているときにこの言葉が浮上してきて、
もしかして写真は、時間を小さく刻んで幸せを捕らえる方法なのかも、
などと思う。
そういえば、競馬好きだった寺山修司が、
トータルで収支は浮いていますか?、
というようなことを聞かれて、
あなたの人生はトータルで幸せですか?
そんなことを聞いてなんの意味があるんだ、
と答えたとどこかに書いていた。
読んだ当時競馬におぼれていた私は、
この言葉に深く同意したものだ。
まあ、私の場合は、単なる負けることへの言い訳だったけど。

夕方、10月の個展に向けて撮影。
カラーフィルムでハッセル。
フィルム1本撮り終えたところで、
家にフィルムを忘れてきたことに気付く。
微妙に時間を選ぶ撮影なので、
走って家に取りに帰る。
走りながら自分の間抜けさに怒りがこみ上げる。

手の中のオリンパスPEN FT。
大口径レンズをつけて、
小さなファインダーを覗き込む快楽は他のカメラでは味わえない。