テレビで狂犬病が話題になっている。
私は、狂犬病のワクチンを打ったことがある。
18年前の11月、私はタイを旅行していた。
タイに入国して1ヶ月たとうとしていたころ、
コンケーンという東北部の街を歩いているときに、
突然、右ふくらはぎに痛みを感じた。
思わず脚を引いて後ろを振り向くと、そこに犬がいた。
犬を追い払い、ズボンをめくってみると、
3つの穴が開いて、そこから血が流れていた。
痛みより何よりも先に、「狂犬病」のことが頭に浮かんだ。
その数日前、旅行者の間で狂犬病のことが話題になっていた。
「発病したら、水が怖くなるんだって」
「で、最後には死んじゃうんだよ」
などという話を、酒を飲みながらしていたところなのだ。
とにかく病院へ、と思い、タクシーを拾い
「コンケーン大学へ」
と告げた。
前日、私は知り合ったタイ人の若者とコンケーン大学を見学していたのだ。
そのときに大学病院があることを知っていた。
病院でなんとか事情を説明した後、
ワクチンを打つことになった。
「今日、3日目、1週間目、2週間目、1ヶ月目、3ヶ月目、合計6回打つからね」
と医者は言った。
「まあ、3ヶ月目はしなくても大丈夫だと思うから、5回かな」
と付け加えた。
私は、
「えー、3日後からインドに行くことになってるんですけど」
と言おうとして、やめた。
いいや、このままタイに残って注射を打とう、
そう思った。
結局その後2ヶ月間タイを旅行し5回の注射を打ち、
狂犬病は発病せずに現在に至っている。
ワクチンを打ったとはいえ、3ヶ月ぐらいは、
「発病するんじゃないか」
と、落ち着かない気持ちだった。
狂犬病は、怖い。
ほんとに怖いんですよ。